新型iPhoneの価格チェック!
まず、新型iPhoneの価格からチェックしてみましょう。
たいそうなお値段です。iPhoneXなんて、軽くパソコン1台分くらいします。
でも、ここで価格をチェックしたのにはワケがあります。
税法上、一発で経費で落とせる・落とせないは、価格で決まるからです。
iPhone Xや256GBモノは、一発で落とせない!
まず、個人事業主や会社(以下、事業主とします)が一発でその年度の費用に落とすことができるのは、購入金額が1単位10万円未満のものです。
ところで、この「10万円未満」って、どういうことなんでしょう?税込金額で判断するの?それとも税抜金額で?
答えは…
事業主が消費税の免税事業者(消費税の申告納税をする必要の無い事業者)であれば、税込金額で判断します。
事業主が消費税の課税事業者(消費税の申告納税をする必要がある事業者)で、
会計処理を「税抜経理」でしている場合は税抜金額で、
会計処理を「税込経理」でしている場合は税込金額で判断します。
ということは、消費税免税事業者は、iPhone 8 の256GBも、一発で落とせないことに!
では、一発で落とせない場合、どうやって経費にするんでしょうか?
(原則)10万円以上のものは「減価償却」をする!
購入金額が10万円以上で「一発で落とせない」ものは固定資産といいます。固定資産は「減価償却」という方法で、買った年から数年間に渡って、費用にしていきます。
消費税の免税事業者である事業主が、事業で使うパソコンを年のはじめの1月に税込40万円で購入したら、このパソコンの購入費用は「減価償却費」として、4年にわたって10万円ずつ経費にしていくことになります。
この「何年にわたって経費にしていくか」は、物品ごとに税法で決められた「法定耐用年数」に基づいて決まります。法定耐用年数とは「この資産ならこれぐらいの期間は使えるだろう」という年数のことで、パソコン(電子計算機)は4年、電話設備その他の通信機器は6年になります。
ちなみにiPhoneなどのスマートフォンは、電話設備というよりはパソコンに近いので、電子計算機として耐用年数4年。つまり、4年にわたって経費にしていきます。
固定資産を年の途中で購入した場合は、1年間分の減価償却費÷12×固定資産の使用を開始した時から年度末までの月数分を経費にします。
個人事業主の場合は
7月に購入し使い始めたら、減価償却費÷12×6ヶ月分
12月に購入し使い始めたら、減価償却費÷12×1ヶ月分
が経費になります。これを月数あん分といいます。
つまり、年末に節税しようとして、駆け込みでiPhone Xの256GBを購入しても…
140,184円×0.25(耐用年数4年の償却率)÷12×1ヶ月分=2,920円
財布からは14万円出ていったのに、2,920円しか経費になりません!なんてこった!
(例外1)10万円 〜 20万円未満のものは「一括償却資産」で経費にできる!
ここまで読んで
「だいたい、iPhoneの耐用年数が4年なんておかしいよ!Appleだって『iPhoneの電池はもって3年』って言ってるのに!」
と、お嘆きの方も多いことでしょう。そんな方へ、この「減価償却」という方法はあくまで原則。実は、通常の減価償却よりも、もっと多い額を償却できる方法があるのです!
それが「一括償却資産」。取得価額が10万円以上〜20万円未満のものは、「一括償却資産」として処理することもできます。「一括償却資産」は、法定耐用年数に関係なく、購入価格を3年間で経費にします。
たとえば、iPhone Xの256GBならこんな感じで経費にできる!購入した日に関係なく、購入価格を3で割った金額を経費として落とせるのが魅力的!
年末ギリギリに買っても、月数あん分しなくていいのが嬉しいね!
償却期間3年とは、実際のiPhoneの寿命にも近い!
でもね、事業主が青色申告をしていたら、もっと良い方法を選ぶことができるんです。それは…
(例外2)30万円未満のものは「少額減価償却資産の特例」で一発で落とすことも!(ただし青色申告者のみ)
青色申告をしている個人事業主や中小企業者の場合は、30万円未満のものであれば、一発でその事業年度の経費にすることができる特例があります(少額減価償却資産の特例)。
ちなみにこの特例は、2018年3月31日までの間に購入したものに限られますが、今までの税制改正でも、延長・延長・また延長でずっと続いているので、おそらく来年以降も継続されることでしょう。
もしもあなたが今年儲かりそうで、「欲しい!」と思っている買い物があれば、この制度を利用して一発で落とすのもアリです。ただし、この特例の限度額は「トータルで年間300万円のお買い物まで」なので、ご注意ください。たとえば20万円のものであれば、年間で15個までなら買っても一発で落とせるということです。
で、どれくらい税額に差があるの?
「10万円以上の固定資産を経費にする方法が3つあるのはわかった。で、どれくらい税額に影響があるの?」という方へ。ズバッとお答えしましょう。
iPhoneXの発売日が11月3日ということで、11月にiPhoneX 256GBを買ったとして計算してみました!所得税率20%・住民税率10%という前提です。
そして、今年の経費にはならないけれど、もしも来年の1月にiPhoneX 256GBを買ったとしたら、来年の税額の差はこんな感じです。
年末年始のお買い物のご参考までに!
あとが記
まあ、その年に買った金額を全額経費に出来なくても、次の年から徐々に経費化できるわけですし、税額の差を見て、「これくらいの差だったら、欲しいものを欲しいうちに買ったほうがいい!」と思う人は、さっさと今、好きな機種を買うべきでしょう。
税法に引きずられてクオリティ・オブ・ライフを見失うのも変な話だし。
え?税理士なのに、そんな結論でいいの?
でも、税法を知った上で、節税額よりも大切なものを選択するということこそ、私は重要な「経営判断」だと考えています。
あとが記のあとが記(後編へ)
減価償却・一括償却資産・少額減価償却資産の特例と、どの方法をとるかによって、事業用の固定資産にかかる「償却資産税」に影響がでます。
主にこのエントリーを読まれるフリーランスの方は、償却資産税がかからない人がほとんどだと思うので(免税点150万円)、まず前編では割愛させていただきました。
後編では、償却資産税の関係と、プライベート部分の「自己否認」についてお話しします。
※私の2冊目の著書です。ありがたいことに、韓国でも翻訳出版されました!2/11には
オーディオブックも出ました。今年は3冊目の著書を出すべく、準備中です。
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