こんな状況を抜け出すためには、今までとは違う解決法が必要となる。その解決法こそが、自分の内側にある「起業家」と「マネージャー」の人格を呼び起こすことなのである。
この「はじめの一歩を踏み出そう」は、アメリカの起業家たちにとってはバイブルのような本なんだそうです。
2000年、米・ビジネス誌「Inc.」が行った成長企業500社のCEOへのアンケートで、ビジネス書No.1に選ばれたんだとか。ちなみに、このアンケートの2位は「7つの習慣」、3位が「ビジョナリー・カンパニー」。これだけで本書の1位というのがどれだけすごいかわかるというものです。
そんな本書の著者、マイケル・E・ガーバー氏はどういう人物かというと、20年間にわたりスモールビジネスを対象に経営コンサルティングを行ってきたという方で、アドバイスしてきた企業は25,000社(!)にも及ぶとのこと。…ということは、1年1,250社!毎日休み無くアドバイスしても1日3社以上!です。うーんこれまたすごい。
このガーバー氏が、スモールビジネスにありがちな職人タイプの経営者が陥るワナ、失敗、そしてそれを打開する方策を説く——というのが本書の内容です。ガーバー氏がスモールビジネスに特化したコンサルタントだったからこそ書けた本と言えましょう。
ところで、私はこの本を読む前は、邦題(はじめの一歩を踏み出そう)のイメージから、情緒的な自己啓発系の本かな?と、勝手にイメージしていたのですが、読んでみたらいい意味で期待を裏切られました。ロジカルで具体的なノウハウが豊富。しかもよく整理統合されています。理路整然としているので、すいすい読めます。
特に、PART 3の「成功するための7つのステップ」は出色です。
1)事業の究極の目標の設定
2)戦略的目標の設定
3)組織戦略
4)マネジメント戦略
5)人材戦略
6)マーケティング戦略
7)システム戦略
この7つのステップを読むと、人材戦略(採用面接のポイントまで!)とか、マーケティングの基礎とかが学べてしまう!本書は充分に「経営学入門」の役割を果たしていると思います。だから、これから経営に関するちょっと難しめの本にチャレンジしようという方は、その前に本書を読むと良いのでは?
あと本書は、焼きたてのパイを売る店で起業したサラという女性の物語を軸に展開していくところに、大きな特徴があります。
「今朝は二時に起きて、三時からここで準備してたの。それからパイを焼いて、時間通りにお店を開けて、お客さんの対応をして、掃除をして、お店を閉めたわ。でも、その後に仕入れにも行かなきゃならないし、レジの現金も勘定して、銀行にも行かなきゃならない。それから夕食をとって、明日のためにパイの仕込みをするのよ。これだけやってるうちに、もう夜の九時半とか十時になっちゃうわ。普通の人がこれだけ頑張ったら『神様、おかげさまで今日も一日無事に終わりました』と言うところよ。でも、私はそのあとにテーブルに向かって、来月の家賃の資金繰りをどうしようかって考えなきゃならないの」
多くの起業家が、「サラは私だ!」と思うのではないでしょうか。本書を読んでいると、サラを通して自分自身が著者のコンサルを受けているかのような気分になるのです。
で、このサラに感情移入してしまうせいでしょうか、けっこうじわーっとくるんですよ。特に、雇った人が次々に退職していくくだりでは、泣けました。
そして、サラのような挫折にぶちあたった時に多くの起業家は、「自分には人望がないんだ!」と、自尊心を失い、「ああ、所詮自分は経営者のタマではなかったんだ…」と、事業を縮小してしまいます。
でも、そういった経営者に、著者のガーバー氏はこう声を大にして言いたいんだと思います。
「事業がうまくいかないのは、あなたの能力とか人間性の問題じゃないよ。
あなたが、事業を発展させるプログラムを知らなかったから。それだけだよ。
だから、自分を責めたりいじけたりして、事業を縮小させるなんて、もったいないよ」
と。
そう、起業前って、仕事のやり方は身についても、事業のやり方を学べることって、滅多にないですから。だから、カベにぶつかったからって、自暴自棄になるのはまだ早い!
行き詰まったら、まずはこの本を読んで。
さあ、はじめの一歩を踏み出そう!
マイケル・E. ガーバー
世界文化社
2003-05-01
コミック版も出ていることにびっくり!
でも、マンガになるのもわかる。感情移入できる、いい本ですから。
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