美奈さんは順風満帆な三代目ではなく、工場の従業員全員から辞表をつきつけられるという、壮絶体験を乗り越えられたお方。
年齢もほぼ一緒。そしてお恥ずかしい話、この本を買った2007〜2008年頃、私は税理士事務所の所長としてマネージメントに自信を失くしていた時期だったので、
「彼女はこの危機をいかにして乗り越えたんだろうか?」
と、自分に重ねて何度も本書を読みなおしたものです。
「いいよねぇ、できあがった会社の2世3世って。もうレールが敷いてあるから楽なんでしょ?」などと思いがちですが、美奈さんの話を聞いたら、そんなの大きな勘違いであることがわかります。
入社した美奈さんはすぐ気づきます。
「なんだかこの会社、おかしい…

」
当時のホッピー社は、瓶詰めで入社したら一生瓶詰め、品質管理だったら一生品質管理。そのせいかみんな自分の仕事を黙々とこなすだけで、50人くらいの小さな会社なのに、まったく社内の交流がなかったとか。
しかも、社員のみんなが「ホッピーが嫌い」。呑み会でもホッピーには手を付けない!「みんな、もっと自分の会社の商品を愛そうよ!」と美奈さんが声をかけても、社員はドン引きだったそうです。
出来上がってしまった因習を解体することは、無から何かを作るより大変です。会社を変えるために、美奈さんは父親ともケンカをする日々。「時として父親の人格否定のようになってしまって辛かった」そうです。
そして壮絶体験のピークが、工場の従業員全員から辞表をつきつけられた「工場長の乱」。数々の社内改革に乗り出した美奈さん。そんな時「何があっても美奈に付いて行く」と約束してくれたはずの工場長が、ある日、自分だけでなく工場全員の「辞表」を持ってやって来たのです。
美奈さんは「自分の私利私欲のために改革をしているのではない。純粋に会社のためにと思ってやっているのに、何で!?」と、この時はかなりパニックになったとか…。
この他にも、入社して間もない頃、自信満々で企画した商品が大失敗し1,000万円の大赤字を出したり、美奈さんが何の気なしに言ったひとことで、経理担当役員だった親戚が会社に出てこなくなりそのまま退社し、会社の経理が回らなくなったり。美奈さんの経験談を読んでいくと「自分の苦労なんて、苦労とは言えないレベルだわ」と勇気づけられます(^_^;)。
では、美奈さんはこういった出来事をどのようにして乗り越えていったのでしょうか!?——やはり、ここが気になりますよね!具体的な話は本書の内容を読む際の楽しみにとっておくとして、私が感じた美奈さんが危機を乗り越えることができたポイントは、次の3つです。
1 — 息抜き・夢中になるのが上手
実は7年前、美奈さんの講演会に参加したことがあったのですが、美奈さんが
「落ち込んだりへこんだ時はどうしてますか?何か活気づくアイデアはありますか?」
と質問を受けた際に
「歩く。1000円札だけ持って、ケイタイも持たずにスタスタ歩きます。」
「書く。ノートに見た夢を書いたり、今日やることを書いて、ペンを通じて自分と対話します。」
と、さらっと仰ったのがすごく印象に残っています。
また
「万年筆おたくです」
「子どもの頃から赤毛のアンが大好き」
などと、自分の趣味(世界)を、しっかり持っていらっしゃる。
「好きなこと・夢中になれるものを、積極的に探している」んだそうです。
ぱっと簡単に気持ちを切り替えられる方法や、好きなこと・夢中になれるものに貪欲。これも才能のうちだと思います。この才能のおかげで、気持ちを切り替える効果だけでなく、仕事のトラブルや難局でさえも、夢中になって取り組んでしまうように思います。
とにかく、その「夢中ぶり」が人並み外れているなぁと感じました。本書を読んですごいパワーを感じるのは、そのためのようです。
2 — 人に頼るのが上手
美奈さんは、いざという時に人に甘えたり頼るのがすごい上手です。
例えば「工場長の乱」の時に美奈さんが助けを求めたのは、あの有名な小山昇さん。その他にも本書を読むと、経営者として学ぼうとする時、商品開発の時…「お願いした」「協力して頂いた」という記述がいっぱい出てきます。
人に頼るのが上手なのは、人を選ぶ嗅覚が優れている、積極的…そして、お世話になりっぱなしなだけでなく、美奈さん自身も頼られたら、ちゃんとお世話をすることを心がけているから。
甘えっぱなしでないのがポイントですね。
3 — 底抜けに明るい
何だかんだ言って美奈さんの最大の武器はここでしょう!講演会のあとにサインをして頂いたときの笑顔が、まさに「破顔一笑」といったかんじでした。この笑顔が見たくて協力してしまう…という方も多いはず。
でも、その明るさの根底にあるものがすごいんです。明るさの秘訣は
「落ち込んでいると判断を誤るから」
経営者がくさくさしていたら会社がだめになるという、強い意志の表れなのですね。
ところで美奈さん「工場長の乱」の後は、「経営者が一人突っ走ってはいけない。会社を変えたいと思っても実践していくのは社員なのだから」と猛省。経営の勉強をするのも、社員と一緒にすることから始めたそうです。壮絶体験をバネに、一歩一歩経営者らしくなっていく美奈さんの考えや行動を追体験できるのが、本書のいいところだと思います。
生まれついてのリーダーなんて、最初から満点の経営者なんて、なかなかいません。逃げずに問題と対峙すれば、会社も自分自身も自ずと成長していける——そういう確信を、本書から得ることができます。
大会社の社長や偉人の本などは
「わかっちゃいるけど、この人と自分は出来が違うし。現実離れしてるし」
と、冷めた目で読んでしまうという方ほど、石渡美奈さんのこの本はオススメです。
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